第13話 資本と互助

第2章 始動

「真言の書」の解析によって、エントロピー消失という驚くべき概念が明らかになった。
そしてその本をエフィアに贈った人物が、十数年前にイストリア大陸の中心都市へ旅立ったという情報も得た。
YUKIは決意を固めた。空間魔法とQ-lioの障壁の謎を解明するには、その人物を探し出す必要がある。
「イストリア大陸の中心都市へ行きましょう」
しかし、エフィアは困惑した表情を浮かべた。牧場の結界を維持する役割がある。簡単には離れられない。
「でも、私がいないと牧場の結界が...」
KENZOが口を開いた。「だったら、一時的に誰かに牧場の警備を頼めばいいんじゃないか?」
ロッジ夫妻も「それもそうだね」と頷いた。この世界には冒険者という職業があり、依頼を受けて様々な仕事をこなしているという。


翌日、一行はドゥーンの町へと向かった。
KENZOが以前ミルクを売りに来た時に出会ったデンダーという冒険者がいた。
町一番の実力者と言われており、もし彼が引き受けてくれれば心強い。
ドゥーンの町の中心部には、冒険者たちが集まる事務所兼酒場があった。
木造の建物の看板には「冒険者ギルド・ドゥーン支部」と書かれている。
扉を開けると、数人の冒険者たちが依頼書を眺めたり、談笑したりしていた。
奥のカウンターの近くに、見覚えのある大柄な男が座っていた。デンダーだ。
「よう、犬のにいちゃん。また来たのか」デンダーは皮肉げに笑った。


デンダーの返事は予想外だった。金額の問題ではない、と。
彼には他の依頼があり、町の人々との約束もある。信頼関係を築いてきた仕事を簡単には手放せない。
「報酬を倍にします」YUKIが提案したが、デンダーは首を横に振った。
「金じゃねえんだよ。俺には俺の責任がある」
デンダーが断ったことで、他の冒険者たちも次々と依頼を断った。
「デンダーさんが受けないなら、俺たちも遠慮するよ」
「町一番が断るってことは、何か理由があるんだろ」
一行は何も成果を得られないまま、冒険者ギルドを後にした。


牧場への帰り道、YUKIは考え込んでいた。
地球では、お金を積めば多くの問題が解決できた。資本主義社会では当然のことだ。
しかしこの世界は違う。お金よりも大切なものがある。信頼、関係性、互いの助け合い。
KENZOも自分なりに考えていた。あついは、この前いきなり殴りかかってきた。
「あいつは格闘の実力も力もあった、モンスターを退治するってだれでもできる仕事じゃないぞ・・」KENZOが呟いた。
エフィアが優しく微笑んだ。「そうね。村や町の安全にかかわるのは、ここでは大事な仕事だわ」
YUKIも納得した。「モンスターなど外部の脅威がある環境下では、わたしたちと違う関係性があるのかも」
旅立ちの前に、この世界での新たな課題を突きつけられた。この世界の価値基準は・・

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資本主義と互助社会の違い
資本主義とは:
• 市場経済:需要と供給で価格が決まる
• 貨幣価値:お金が交換の中心的手段
• 効率性の追求:最小コストで最大利益を目指す
• 競争原理:競争によって品質向上やイノベーションが促進される
互助社会・共同体経済とは:
• 信頼関係:長期的な人間関係が活動の基盤
• 互恵性:与えたものはいつか返ってくるという期待
• 贈与経済:金銭ではなく、お互いの助け合いで成り立つ
• 社会的責任:個人よりもコミュニティ全体の利益を重視
• 関係性重視:「誰から買うか」が「何を買うか」と同じくらい重要
歴史的な経済システムの変遷:
• 物々交換 → 貨幣経済 → 資本主義 → 現代の多様な経済システム
• 多くの伝統的社会では互助が基本だった
• 産業革命以降、資本主義が急速に広がった

現代でも、ハイパーインフレや有事の際に貨幣の従来の価値基準が通用しなくなる場合もある

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