第1話 光の予兆 ψ(x,t)=Acos(kx−ωt+ϕ)

2045年、アメリカの僻地。10年前に突如として現れたQ-lioの障壁—熱も、電波も、光も、地場も、一切の物理現象を通さない謎の隔離エリア。
多くの研究機関や軍隊が内部への進入を試みたが、全く手掛かりを見つけることはできなかった。
やがて10年もの時が流れ、誰もその存在について話題にすることもなくなった。
近くにあった観光名所もさびれて人が離れ、今では砂漠の真ん中に忘れ去られた異物として存在している。
そんな中、一人の科学者が計測ロボットと共に地道な観測を続けていた...


YUKI Morganは、この10年間、Q-lioの障壁について独自の研究を続けてきた。
他の研究機関が諦めて去った後も、彼女だけは毎日計測を続けている。
相棒は愛称「ぬるリンψ」と呼ぶ自律型ASI(超人工知能)ロボット。様々なセンサーで障壁の状態を24時間監視している。
これまで10年間、障壁は完全に無反応だった。電波も、熱も、光も、地磁気も、何一つとして変化を示さなかった。
まるで現実世界に現れた「絶対的な壁」のような存在だった。
しかし先ほどから、わずかながら異常な測定値が記録されていた。
ほんの微かな、ノイズともとれるような変化。しかし長年の観測経験が告げている—これは何かの前兆だと。


YUKIが計測データを分析していたその時、ぬるリンψのセンサーが急激な変化を検知した。
障壁の一部が、ほんの一瞬だけ光った。10年間完全に暗黒だった表面に、微かな光の揺らぎが生じたのだ。
光の干渉パターンが現れ、波長の乱れが測定された。
そして—かすかに、しかし確実に、助けを求める声が聞こえた。
「誰か...助けて...」
その声は、障壁の内部から響いてきた。10年間の沈黙を破る、最初の信号だった。
物理法則を無視した絶対的隔離を誇っていたQ-lioの障壁に、ついに亀裂が生じたのだろうか。
それとも、内部から何かが脱出を試みているのだろうか。

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光の波としての性質と波動方程式
光とは:
•「光が光った」というとき、私たちが目にしているのは電磁波(光=電磁波)の一部なんだ。光は「波としての性質」と「粒子としての性質(光子)」を両方持つんだ。
波動方程式:
• 一般的な波の式:ψ(x,t) = A cos(kx - ωt + ϕ)
• A:振幅(波の大きさ)
• k:波数(2π/λ、λは波長)
• ω:角振動数(2πf、fは振動数)
• ϕ:初期位相(波のスタート位置のズレ)
光の干渉:
• 二つ以上の光波が重なり合うことで起こる現象
• 波が強め合ったり弱め合ったりして、明暗のパターンを作る
• YUKIが観測した「光の揺らぎと干渉」は、障壁内部で何らかの光源が活動していることを示している!

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